特集 教会堂の建つところ(2004.7)
フランス・オーヴェルニュのクレルモン・フェランの町の中央には巨大な大聖堂がそびえ立ち、ゴシックの尖塔は町のどこからでも望まれます。これと対照的に、ロマネスクのノートル・ダム・デュ・ポール教会を探すには大変に苦労します。教会堂は旧市街の狭い通りを進んだ先に、家並に埋まるようにして建っています。この教会堂こそ、独特の建築様式を持つオーヴェルニュ・ロマネスクを代表する教会堂で、訪れる観光客は少ないのですが、今も強い信仰の対象となっています。
都市に建つロマネスク教会堂は、このように家並に囲まれて、全景を眺めることも難しい場合があります。
一方、都市を離れた山間や丘陵地に建つロマネスク教会堂は、遠くから全景を望むことができます。
キリスト教が入る前のケルト、ゲルマンの社会においては、自然信仰が行われていました。巨石・樹木・泉等が崇拝の対象となり、そのようなもののあった場所が、その後も聖なる場所として引きつがれてきました。キリスト教はこのような民間信仰との対決、妥協により浸透していったので、ロマネスク教会堂はケルト、ゲルマンの聖地に建てられることが多かったのです。岩山を崇拝したル・ピュイ、ロカマドゥール、モンセラット、泉を崇拝したシャルトル、これらの地に建つ教会堂は余りにも有名です。
MORAのデータ・ベースから、景観の優れた教会堂ベストテンを御紹介しましょう。いつもの通り順位はつけません。
Chatel Montagne(France Auvergne)
ドライブ・マップを頼りに車を走らせていると、なだらかな谷の向こうに教会堂が見えてきました。タンポポの花が咲き、草原では羊達が草を食んでいます。この天国のような場所に建つ教会堂が、目指す教会堂なのです。
Orcival(France Auvergne)
丘陵地帯をうねるように続く道を走っていると、突然、谷の向こうにオルシヴァルの教会堂の美しい塔と後背部が現れました。
早速車を停め、フランスでは珍しい山桜越しに、写真を撮りました。
St.Nectaire(France Auvergne)
オーヴェルニュのなだらかに続く山懐に、形のよい教会堂とそれを囲む村落があります。
サン・ネクテールは、ロマネスク教会とチーズで有名な土地です。
Vezlay(France Bourgogne)
ヴェズレーの丘とその頂きに建つサント・マドレーヌ教会は遠くからでも望まれます。
8世紀初頭、マグダラのマリアの遺骨と伝えられた聖遺物をプロヴァンスから盗み移したことから聖地となり、コンポステーラ巡礼の起点のひとつとして栄えました。
1146年、第2回十字軍はこの丘から出発したのです。
St.Guilhem le Desert(France Languedoc)
川に沿った道路を登ると目の前が開け、谷を挟んで教会堂の全景が眺められます。
石灰岩の岩山に囲まれた静かな集落と端正な後背部の造形は、いつまでも見飽きることはありません。
Conques(France Midi-Pyrenees)
朝霧のかかる山間の小さな集落に、3つの塔を持つ教会堂が建っています。
コンクは、ル・ピュイを起点とするコンポステーラ巡礼路の重要な巡礼地として栄え、現在も巡礼者の絶えない聖地となっています。
Senanque(France Provence)
セナンクにあるシトー派の修道院に行くには、断崖に切り開かれた山道を通っていくしかありません。
谷底には修道院とラベンダー畑があるだけで、隔絶し充足した桃源郷を思わせます。
Stes.Maries de la Mer(France Provence)
アルルからカマルグの湿地帯を走り抜けると、遠浅の海の向こうに要塞のような教会堂が見えてきます。
マグダラのマリアらが流れ着いたとされるこの聖地は、ジプシーの聖地ともされ、独特の雰囲気をたたえています。
Canigou(France Roussillon)
ピレネー山脈に連なるカニグー山塊の標高約1000メートルの頂きに修道院はあります。3キロ程の山道を徒歩で登るしかない、まさに下界と隔絶した聖地です。
Frontanya(Spain Cataluna)
教会堂と数軒の家しかない集落は、小さなキャンプ施設があるので夏は賑わうこともあるのでしょうが、冬はどんなにか寂しいことでしょう。
お椀を伏せたような小山とずんぐりした教会堂の組合わせが絶妙です。